精神障害について

精神障害は、そのほとんどがなぜ生ずるかはっきりわかっていません。臨床上は、便宜的に原因を「心因」「内因」「外因」に分けてとらえます。
「心因性精神障害」は、正常範囲ですが、かたよった状態です。従来神経症と呼ばれていました。ある出来事への反応として生ずることもありますが、きっかけがはっきりしないこともあります。「内因性精神障害」は、まさに原因不明で、統合失調症と躁うつ病(気分障害)がこれに含まれます。「外因性精神障害」は、身体疾患から生じた脳の侵害で、急性と慢性に分けられます。急性の脳侵害の主な症状は、意識の濁りです。頭にけがをおったり、脳炎にかかったり、肺炎で高熱を発したりすると、意識がにごります。軽く意識がにごり、言動が混乱する状態をせん妄といいます。一方、慢性の脳侵害の代表的なものは認知症です。
これらのうち、心因性精神障害は「非疾患」で、内因性と外因性は「疾患」です。ですから、内因性と外因性が病気ということになります。医療は基本的に疾患を治療の対象としますが、非疾患でも、症状が強い場合は回復のお手伝いをします。
人に精神的変調をみた場合、私たち医師は、外因→内因→心因の順で、精神障害を検討していきます。

当科で扱う主な疾患

これらのうち、不安障害、パニック障害、強迫性障害、適応障害は「心因性」に含まれ、統合失調症や躁うつ病は「内因性」に含まれます。
不眠症は症状で、いろいろな精神障害で生じます。

統合失調症とは

内因性精神障害の主なもののひとつです。多くの研究にもかかわらず、病態はほとんど解明されていません。
この疾患を特徴づける症状は、発作性に生ずる異常体験です。幻覚妄想とも呼ばれますが、幻覚と妄想は必ずしもきれいに分けられません。病的な精神状態で、患者さんからさまざまな訴えが聞かれるということです。訴えがあまり具体的にならず、「えもいわれぬ異様な気分」「押し寄せるような不安」と述べられることもあります。どうにも表現しようがない恐ろしさです。健常な方も不安をいだくことはありますが、統合失調症の患者さんの不安はずっと強く、精神の根幹が揺さぶられているかのようです。
ただ、「発作性」と表現したように、病的な精神状態は生活の中でときおり生ずるだけです。異常体験が生じていないとき、患者さんは正常な精神状態です。多くの時間は正常な状態です。
この疾患は若年で発症することが多く、早期発見・治療が回復に大切です。その際、自己診断は推奨されません。我流の治療は病をこじらせてしまいます。医師の診察をうけ、患者さんが自身の病的な状態に気づけるようになり、それをそっとやりすごし、病気へのとらわれを減らし、こころにみずみずしさを保つことが大切です。補助的に薬を使うことも少なくありません。
回復に時間がかかりますが、粘り強く治療を続けることで、最終的に半数の方は自立した生活を営むことができると云われています。

躁うつ病とは

躁うつ病(気分障害)は、爽快な多動期すなわち躁状態と、憂うつな減動期すなわちうつ状態と、正常の平静期とが繰り返してあらわれるものです。躁期は躁病、うつ期はうつ病といわれ、この発病期はおおくは数週から数か月です。躁とうつが交互にあらわれることもありますが、一般には躁は少なくうつが多いようです。ドイツでは循環症といわれていました。
躁状態もうつ状態も、早めの治療が必要です。

うつ病とは

抑うつ状態、抑うつ症状群をしめします。
感情の点では気の沈み、淋しさ、哀しみ、不安、厭世、卑下、自己非難、罪を犯した感じ、絶望がみられます。意欲と行動面では、決断や実行ができず、抑えつけられていて、もの憂くだるくて、活動できずに苦しみます。
患者さんはだるさ、能力のない感じ、からだの不調感や衰弱感の苦しみのために、からだの病気になったと思うこともあります。患者さんは淋しさや憂うつさをからだの部分にてらして、胸が淋しい、額が憂うつだと訴えます。同時に実際の便秘や月経不順に悩みます。多くは晩より朝によけい調子悪く感じます。
すぐれない気分や能力がないとの感じから、自分に価値がないように思い、絶望して死のうと思う場合もあります。ぜひ早めの治療をお考えください。

躁病とは

躁状態をしめします。
感情の点では、爽快で、気分高揚であり、安心、楽天的、誇大尊大、自信満々です。意欲と行動の点では活動性がまし、何にでも手を出しますが、途中で気がかわり完成せずにやめたり、他のことに脱線したり、失敗したりします。思考の点では考えが次々わき出し、話題がそれからそれへとそれていきます。からだの調子は好調で、何でもできる気がし、少ししか眠らないのに快適です。浪費など社会的脱線が多く、周りの人が困ってしまいます。感情が変わりやすく、少し抵抗にあうと怒り出したりしますが、すぐまたもとの爽快にもどります。
躁状態の最中は、本人はあまりその自覚がありませんが、落ちついてから自分の躁状態の時のことを思い返してひどくくやんだりします。ですから、躁状態を放置すると、患者さんをあとで苦しめてしまいます。

不安障害とは

不安は対象がはっきりしない恐れで、苦しい、しめつけられるような、じっとしていられない苦悶の感じです。狭心症や喘息の時など、からだの病気でも起こりえます。落ち着きがなく、錯乱することもあります。動機、どもり、尿意、下痢、震えなどからだの反応が同時におこるあらわれることがあります。
以前の行為の小さな失敗や、失敗してはいけないとの心配をきっかけいにして、その失敗を予期するために、いざ実行というときに不安が起こり、そのためにこの行為がうまくいかず、うまくいかないと次の実行の不成功をよけい予期するという悪循環をなして、不安も行為の失敗も強まります。
このような症状が続いているときは、当クリニックにご相談ください。

パニック障害とは

不安障害のひとつです。
特別な状況あるいは環境に限定されず、そのため予知できない繰り返される不安(パニック)発作です。パニック(恐慌)とは、突発的な激しい原始的不安です。動機、胸痛、窒息感、めまいや、現実でないような感じが目だちます。パニック発作におそわれた患者さんは、恐れやからだの症状の高まりで、急いでその場を立ち去ります。たとえばバスや人ごみなど特定の状況で起こると、その後、患者さんはその状況を避けるようになることがあります。発作と発作のあいだは、「再び発作を起こしたらどうしようか」という、発作の再燃を恐れる気持ちをいだいています。

強迫性障害とは

強迫とは、自分で規制できずにひとりでに起こってくることです。たとえば、ごくあたりまえのことの理由を考えなければならず、なぜ陽は東から昇るのか、なぜ1と2とでは3になるのか考えなければならない、1から7まで繰り返し頭の中で考えなければならない(強迫思考)、神聖な場所で不潔な言葉を吐かねばならない、戸が閉まっているか何回も閉めなおさねばならない、手を何回も洗わなければならない(強迫行為)などです。
なぜ強迫が生ずるか、わかっていません。強迫性障害といったときは神経症圏で考えますが、強迫という症状は、統合失調症等ほかの精神障害でもあらわれることがあります。

適応障害とは

心因反応のひとつです。
生活の中で強く気持ちに負担がかかると、今の生活状況に順応できなくなります。気持ちに負担になることがらとして、親しい人との死別、個人の人間関係が乱されることなどがあります。個人的素質あるいは脆弱性が、発症に役割を演じているかもしれませんが、生活上のできごとがなければこの状態は起こらないと考えられます。
症状は多彩で、抑うつ気分、不安、心配、日課の遂行の困難などです。現状の中で対処したり、計画したり続けることができないという感じをもちます。
いずれの症状も、重症でなく顕著ではありません。患者さんをとりまく状況が良い方向に変われば、半年以内に消退することが多いようです。

不眠症とは

不眠症は、睡眠の質や量が不十分な状態がかなり長期間持続しているものです。ただ熟睡感はかなり主観的で、最小限の睡眠でなんら問題を感じていない人もいる一方で、正常範囲の睡眠をとりながら熟睡感を得られない人がいます。
不眠症は入眠障害の訴えが最も多く、ついで睡眠維持困難と早朝覚醒の訴えが多いです。これらが合併していると訴える場合もあります。不眠が繰り返されると不眠への恐怖がまし、不眠の影響に考えがとらわれてしまいます。この悪循環が症状を長引かせます。
不眠症の患者さんは、眠る時間になると緊張、不安、心配あるいは抑うつを感じ、思考が空回りするようになります。緊張をやわらげるため、薬やアルコールをもちいることもまれでありません。午前に疲れを感じ、日中は気分が沈み、くよくよし、緊張し、イライラし、自分のことばかりにこころを奪われています。
不眠症はけっして珍しい症状ではなく、誰もがなりえます。また、うつ病など他の精神疾患の症状の一つとして不眠症が現れてくるケースもありますので、睡眠薬で解決するだけでなく、併せて根本的な原因を探ることも重要です。

南町クリニック
診療内容
心療内科・精神科
院長
服部 功
医学博士
精神保健指定医
日本精神神経学会 精神科専門医
住所
〒422-8067
静岡県静岡市駿河区南町4-14
グランドメゾン静岡ザタワー101-1
アクセス
JR「静岡駅」 徒歩5分
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